肩痛、肩の可動域制限
肩の痛みは日本人の多くが抱えている問題であり、肩が痛むと高いところの物がとれない、テーブルの上を拭くのが難しい、髪を洗うのが辛い、寝返りをすると強く痛み夜中に目が覚めてしまうなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。
主な原因は、姿勢の問題、肩腱板の炎症、関節の変性、そして急な運動や負傷です。当院ではレントゲン検査と高精細超音波診断装置(エコー)を基本として、必要に応じて連携機関でMRI検査などを行い、痛みの原因を正確に診断します。
放っておくと肩の痛みが長期間続くことで肩関節の動きが著明に低下してしまうことがあります。そうなる前に、専門医による適切な診断と治療が必要です。
頚肩腕症候群 肩こり
頚肩腕症候群とは、首、肩、背中や腕にかけての痛みや痺れを主訴とする疾患群の包括的な診断名として1955年に提唱されたもので、この中には肩こりも含まれます。
原因として、デスクワークやスマートフォンの使用による姿勢の悪化、ストレスなど精神的な緊張、筋肉の緊張、運動不足による血流不全などによる筋肉の過緊張があります。
また、頚椎の変性による神経の圧迫(頚椎症性神経根症)など器質的な疾患の場合もあります。
加療には日常生活の見直しが重要であり、姿勢の改善、ストレッチや運動療法を行います。また、肩周囲の筋肉に硬結部位があれば、エコーガイド下ハイドロリリースを行うことで筋肉の滑走を改善して疼痛を緩和することが可能です。
肩関節周囲炎
一般的には四十肩や五十肩と呼ばれているもので、肩関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して肩関節の周囲の組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。この炎症を長期間放置すると、周囲の組織が同士が癒着し、肩の動きが更に悪くなります(拘縮、凍結肩)。
治療は内服や注射による炎症の管理を行い、リハビリテーションでの運動療法やストレッチングを通じて、肩関節周囲の筋肉を強化し、柔軟性を高めることで症状が緩和されます。
当院ではエコーガイド下に肩峰下滑液包に正確に注射を行うことが可能で、より高い効果が見込めます。同時に肩腱板損傷や腱板内の石灰沈着の有無を確認します。
肩腱板断裂
肩をうごかす筋肉の付着部を腱板と呼び、腱板は腕をあげる際に肩峰と上腕骨に挟まれるクッションの役割も持っています。日常生活の中で繰り返しのストレスがかかることで腱板が断裂し、肩の運動障害、運動時痛や夜間痛が生じます。また、交通事故や転倒などの外傷で急性に起きることもあります。
急性外傷で起きた場合は、三角巾で1~2週間の安静を行います。内服や注射による炎症の管理を行い、残っている腱板の機能を賦活化させる目的でリハビリテーション加療を行います。
変形性肩関節症
肩の軟骨が徐々に摩耗して骨同士がぶつかる事で、肩の腫れを伴う痛みや可動域制限を引き起こす疾患です。原因は加齢の他に、腱板断裂、ステロイドやアルコールの摂取、関節リウマチや上腕骨近位端骨折などが誘因となっていることが多く注意が必要です。
治療は、まずは内服での痛みの管理を行い、リハビリテーションで肩関節の可動域や筋力を維持するためのストレッチやエクササイズを行います。
保存療法では改善が難しいことも多く、必要に応じて希望があれば人工関節を専門としている病院に紹介させていただきます。
石灰沈着性腱板炎
腱板の中に石灰成分が沈着し、石灰が大きくなると痛みが徐々に出現します。また、腱板から石灰成分が破れ出ると急な激痛で発症することもあります。
治療は、エコーガイド下に腱板に針を刺して沈着した石灰成分を吸引する方法を行います。同時に炎症を抑える薬と局所麻酔薬を注射することで、炎症と疼痛をコントロールします。
疼痛が強いときは1~2週間程度の三角巾での安静を行うこともあります。疼痛が改善したら、肩の関節可動域制限が起きないように肩周囲のストレッチや筋力訓練などリハビリを行います。